PEACE STORIES

大統領と話をするときは

私たちが所定の時刻に大統領の執務室に入ろうとしたとき、秘書官から声がかかりました。
「5分だけですよ!」
中に入ると、大きな机の後ろに、固い表情の大統領が座っていました。

開口一番、彼は私たちにたずねました。「私にどんな要求があるのですか?」
私は「感謝の気持ちを伝えたくて、やってきました」と答えました。

彼は椅子の背に身をあずけ、その手には乗らないぞ、と言いたげな目で私たちを見ています。これまでの経験から、政治家を訪ねて来る人の目的は、抗議か頼み事か、いずれかに決まっていると思っていたからです。

「感謝する前に、何かやってほしいことがあるんでしょう? 私に何をさせて感謝したいというのですか?」
「いいえ、何かやってほしいのではなく、あなたのすばらしい難民政策に賛同して、感謝の気持ちを伝えたいのです」
大統領は驚き、そして喜びました。「わざわざやってきて、そんなふうに言ってくれたのは、あなた方がはじめてです」

その後、私たちと大統領は、なごやかに話をしました。

5分後、秘書官が入ってきて、「次の約束の方がお待ちです」と告げました。
大統領は「待っていただきなさい」と指示して、私たちと話を続けました。なにやかやで、私たちは35分間、忌憚なく意見交換をすることができたのでした。

イラスト

政治家は絶えず批判されているので、防御的な態度を取るか、自分がしていることを隠そうとします。上に立つリーダーは特にその傾向があります。批判することで何かを改善できると考えている人がいますが、それは誤った思い込みです。私たちはこの考えを改める必要があります。どんなリーダーも、たいていの人と同じように、非難や批判より、感謝の言葉を歓迎し、はるかに前向きな対応をしてくれるものです。もちろん、心からの感謝と、心にもないお世辞は違いますけれどね。

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